昨夜、ぱらぱら降ってた雨は、依然として降ったり止んだり。
民宿の朝食でいっしょになった女の人と顔を見合わせながら
「まだ降ってるの?」と女将さんに聞くも、よい返事なし。
女の人も、打戻で延光寺へ行くとのこと。お互い6時半の朝食である。
「私、足が遅いから・・早立ちしないと。。どっちから入るの?」と女の人
「どっち?」「真念庵まわり?県道ですか?」「ああ、もちろん県道。真念庵なんてとてもとても。」
というと
「私も県道。。向こうのほうが少し短いらしいけど、こちらのほうが歩きやすいというから」と笑顔。
準備をして表へ。
女将さんが見送りがてら、空を見
「ぱらぱら降ってますね。これは・・本格的に降るかも・・・」と、困った顔をしながら
「お気をつけて。」と送り出してくれた。彼女のほうは、少し先に出発している。
民宿を出て5分もしないうちに大粒の雨が・・・・。
今回、出てくる前に天気予報など調べて、最悪曇り一時雨程度の予報だったので、雨に対して本格的な準備はしてきておらず、持ってるのは簡易レインコートのみ。レインコートといっても腰辺りまでしかない奴。
それでも着ないと・・・・とあわてて着る。リュックと軸は丸出し。
歩き始めると下ノ加江方向からの歩きお遍路さんと次々とすれ違う。皆合羽を着ている。
「おはようございます」と掛け声だけ威勢がいい。朝だから・・そのぐらいは・・。
そうこうするうち、土砂降り。
下ノ加江川の手前を左に山側に5分ほど登って行った所に作業小屋がありその軒先にベンチがあったので、ずっと心配だったリュックを何とかせねばと休憩。菅笠からは滝のように水が落ちて・・・ズボンもほとんどぬれ足にまとわりつく始末。
靴の中は水がはね、ピチピチチャブチャブランランラン状態・・・。
リュックの中はびしょぬれ。まだ泳ぐところまで入っておらず中のタオルが水を吸ってくれてるようで・・・。納経帳は万一を考えいつもナイロン袋に入れてるのでセーフ。めぼしいものをレジ袋にいれ、再び背負い、無理やりリュックの上から雨具を着る。当然短いからお腹のところが出る。仕方がない。服の中にレジ袋を破り広げて巻き込む。
そうこうしているうち、先に出発した女の人が前を通る。
「あれえ~」と大きな声で彼女。先に行ってと手を振ると重装備の彼女はうなづいて足早に歩いていった。
どこかで、重装備に着替えたんだなあ、彼女は。。
空を見上げるも止みそうもない雲行き。あきらめて道路へ・・・出るとたんに菅笠を雨が叩く。
前かがみになり、金剛杖を持ち足早に歩く。
県道21号線に合流、山越えして三原村へ向かう。足早に歩くも先行した女の人の姿は見えない。
そうこうするうち道は、県道なのに軽四一台が通れるぐらいの幅に狭まっていく。その上登り。
ほとんど車は通らない、というより通る気配がない。まして人など・・・・。
・・あってるのかよ?・・と不安になる。雨が降ってるから地図も取り出せない。標識もない。そのうち周りは林や木々の中に入っていき、真上を見ても空がわずかに見えるだけ。
だんだん足早になる。7時前に歩き始め2時間ちょっと完全に山の中。雨も降ってる。
・・・しもたなあ・・先週来るんだった・・先週なら晴れてたのになあ・・修業の道場かあ・・・とぶつぶつ言いながら歩く。たまに会う車。すれ違うのに路肩やちょっと広くなった木の根元に退避するにも往生する。
だいぶあきらめ加減で歩き始めた頃、狭い曲がりくねった道を曲がる時チラッとピンクのカッパを見つける。ほっとする。少し元気が出る。こういうとき人影を見つけると沸々と安心感が湧き上がってくる。
「やっと、追いつきましたよ・・」と私が言うと
「私、10キロぐらいからペースが落ちるから、いつも朝のうちに稼げるだけ稼ごうと歩くんですけどね。今日はこの雨ですしね・・・・」と彼女。
それから、前後しながら2キロ歩くと通常の道路幅の道に出た。ただ、ずっと遍路小屋もなく・・・彼女の足はだんだん遅くなるので、私は先に行くことにした。そのころになって、雨も小降りに。
山間の小集落で、背の高い男の人を追い越す。
「今朝は、どこから出たんですか?」と男の人
「久百々のいさりび」「僕は、安宿」
安宿か・・・前回私がお世話になった下ノ加江の宿だ。あんしゅくと言う。
少し話しながら歩くが、私のほうが早いみたいなので先を行く。
それから30分ほど歩いたら、やっと三原村入り口の竹内商店という雑貨屋にたどり着いた。道を隔てた所に休憩所があり、そこで一休み。必死になって歩いたせいか、靴の中の水はなくなりズボンは半乾きになってきていた。雨は、時たまパラパラ降るぐらいになっていた。休んでいるとすぐ背の高い男の人が追い越して行き、15分ぐらい経ったころ、彼女が現れた。
「あそこでね結局、道路際に座り込んでやすんでたのよ。」
「あの、大きい家のところですか?」
「そうよ、ずーっと歩きぱなしだったから・・・・」
「今日は、何処まで?」と私。「延光寺の嶋屋」
「まだ昼になってないし、それなら大丈夫ですよ」と私。
「あなたは?」「駅前」「平田駅?」「いや、宿毛駅」
「ええ?じゃあだいぶあるわね。」
「そうですね。先ほど聞いたんですが、この道を道なりに15.6キロ行って突き当たりの信号を左に曲がって、1キロほど行ったら右に折れる延光寺の参道が現れるそうですから・・」
と言って、先に休憩所をでた。
あるき遍路用の地図はわかりやすいようでわかりにくい。歩きの道を強調するあまり距離感が正確じゃないので、最近は人に聞くことにしている。その方がわかりやすく教えてくれる場合が多い。
三原村役場近くで、男の人に追いつく。
「何処泊まりですか?僕は嶋屋」と彼。
大体、歩きで会うと大概質問は2つ。何処から来たか?何処へ泊まる?
どちらかである。
「駅前・・・といっても宿毛」
「えっ?じゃあ まだだいぶあるじゃないですか?」
「はあ・・・では、お先」と、足早に歩き始める。
雨で靴の中がぐちゃぐちゃになって足がふやけたところに歩くペースを上げて過ぎてきたせいか、足の裏が痛み出してきた。若干痛みを引きずりながら、三原村の工業団地前の道路を歩いていたら、古い軽四に乗ったおじいさんが寄ってきて、
「お遍路さん